プリーツマスクの設計
いわば理論編です。

これを書いている2009年7月までに、プリーツマスクを10個作りました。
その結果、心地よいフィット感を得るにはどう設計すればよいか、いろいろと解ってきました。
ここではそれらをまとめてみようと思います。

なお、マスクの作り方を検索して迷い込んで来られた一般の方、特に普通のマスクでも息苦しくて嫌だという方はあまり参考になさらないでください(笑)。あくまでもマニア向けですので。


1. 寸法決め (高さ)

作ってみて解ったのですが、プリーツマスクは寸法が1cm違うと着用感がまったく異なります。
その影響度は素材の違いより遥かに大きいです。
プリーツマスクは1枚の布から作る以上、その形は基本的に平面です。なので立体である顔にフィットさせるためには、地球を地図に展開するかのような工夫が要ります。寸法のチューニングが欠かせません。

幸いなことに、プリーツマスクは超立体マスクなどと比べて形が単純なので、調整パラメータは少ないです。この点、マスクを自作してみようという方には、プリーツマスクをおすすめします。
自分で言うのもなんですが、このページには研究の成果が凝縮されています。

Aはマスクが覆う範囲の上下丈です。
顔の外周に沿って測ります。
これがプリーツを広げた状態での上下丈になります。

Bは耳の付け根の高さです。
これをプリーツを畳んだ状態での上下丈にします。
つまりこの寸法は、マスクの大小に依存しません

ところで、Bをなぜ耳の高さに合わせる必要があるのでしょうか?

もしBが耳の高さより大きいと左の写真の状態になります。耳ゴムはより縮まろうとします。耳ゴムがもっとも短くなるのはB=耳の高さの時です。したがってこの縮まろうとする力が、マスクの上下丈をすぼめようとする向きにかかります。ガーゼマスクのようにサイドがしなやかな素材の場合は「しわマスク」になります。硬い素材の場合は折れようとします(右の写真を参照)。いずれもサイドにすき間があいてしまいます。

逆にBが耳の高さより小さいと、マスクを上下に広げようとする(伸縮性のある素材でない限り、実際には伸びない)無駄な力に化けてしまいます。

耳ゴムのテンションを、本来の目的である「マスクを顔に密着させる」向きに働くようにするには、Bを耳の高さに合わせることが必要だ、ということがこれでわかりますね。

というわけでABの寸法が決まれば、プリーツで何cm短絡すればよいかが自ずと決まります。そう、A-Bがその寸法です。

左はその模式図です。2cmピッチのプリーツを2個作ったところです。プリーツは1往復分の生地を短絡します。プリーツが2個なら2×2×2=8cm短絡されることになります。

この例では生地の総延長は14cmですから、この寸法で作ったらA=14cm、B=6cmというマスクが出来上がります。

ちなみに、同じ寸法を短絡するにしても、ピッチと数の組み合わせは無限にありますね。極端な話、8cm短絡するのに4cmピッチのプリーツ1個でもいいわけです。しかし実際には、そんな単気筒大排気量バイクのようなプリーツを作っても、理想とするフィット感はおそらく得られないでしょう。プリーツ1個の範囲に着目すれば、そこは平面だからです。エンジンに適正なシリンダ容積があるように、マスクのプリーツにも適正な寸法があると思ったほうがよいです(笑)。

市販の不織布マスクではピッチ1cmのものが多いようですが、布の場合、それも裏地付の場合は1cmという細かいピッチで折ることはなかなか大変です。私の場合は、1.5cmピッチで作ることがほとんどです。


2. 寸法決め (幅)

フィット感を増そう、顔を包み込む着用感を得よう、としてむやみに幅を広げるのは考えものです。

なぜかというと顔の幅は一般的にAB(左図)だからです。クッキングパパのようなスクウェアな顔立ちならABかもしれませんが、そういう人は平面マスクのフィット感で悩むこともないでしょうからほっときます(笑)。

プリーツマスクはたしかに疑似立体ですが、それはあくまでも垂直方向に対してだけのことで、水平方向はただの平面です。したがって幅を広げすぎると、顎のすぼまりに追従できなくなり、サイドにたるみとなって現れます。丸い球を紙で包むことを想像してみてください。どこかにたるみができますよね?

それを軽減するには、平面に近いというか、正面に近い範囲に限定しておいたほうが、実際のフィット感は高いです。目安としては、市販のプリーツマスク程度でしょうか。


3. 耳ひもの取付け位置

これはもう「なるべく四隅に近いところ」で決まりです。
写真のマスクはやや内側に付いていますね。これだと耳ひもより外側の部分には、顔にフィットさせようという力が掛かりません。せっかくノーズワイヤーを入れても、ほとんど機能してないのではと思います。

自作する際には、できるだけ四隅へ、を心がけましょう(?)。

だめな例。ワイヤーやパッドの内側に取り付けられている。 よい例。ワイヤーと同じぐらい隅のほうへ付いている。


4. 耳ひもの取り回し

私が思いつく限りでは、これだけのバリエーションがあります。

  1. 耳ループ
    市販マスクと同じ。自然な感じで、外出用マスクならこれかな?
    着け外しが楽。
    耳にもろに力がかかるので、あまり強くできない。
  2. パラレル
    耳がフリー。両サイドがしわになりにくい。
    下端が下に引っ張られる向きになるので、あごのフィット感がいまいち。
    外出用だと目立つかな?
  3. クロス
    パラレルの応用編。頭の後ろでクロスさせる。
    拘束感は高いが、パラレルより両サイドは縮みやすい。
    外出用にはちょっとヤバい。
  4. 中国式
    マスクの下端から出たひもを首の後ろにぐるっと回し、
    上端から出たひもは耳に掛けてあご下で結ぶ。
    見た目が自然。後ろ髪がからまない。フィット性はパラレルと同じ?

どれにするかは好みですが、着用感はマスクの四隅から出ているひもがどの向きに引っ張られるかで決まります。マスクの形によっても向き不向きがあるようなので、長めのひもを用意して、あれこれ試してみるのもよいでしょう。

私が試した範囲で一番良かったのは耳ループタイプのアレンジ版で、左右の耳ひもを頭の後ろまで引っぱって互いに結ぶ(短ければ別のゴム紐を介す)方法です。これだと相当強力なフィット感が得られ、しかも耳はフリーです。脱着がちょっと面倒なのと見た目が怪しいので今のところ屋内用ですが。この方法は市販マスクにも使えますのでおすすめです。

ところで、耳ループタイプの場合、両サイドの耳ひもが文字通りループになっている(下左)か、マスクの隅に固定化されている(下右)かによって、テンションのかかり方が違います。

ループになっていると耳のほうへ引っ張られる力がマスクの上下丈をすぼめる向きにも働き、しわマスクになったり、サイドにすき間が空いてしまいます。

市販の立体型ガーゼマスク(「快適革命」など)を見ると耳ひもは右図のように固定化されています。この点を考慮した構造になっていることがわかります。伝統的な?「ループ構造」はあくまでも作る手間や、テンションの調節ができることを重視した簡易構造なのですね。平面マスクを自作するなら、右図のように固定化することをおすすめします。

ちなみに、固定化してしまってもテンションの調整を可能とする方法もあります。

自在耳ひも。
下手な絵ですみません。
金属リングの使用例。

左図のようにフックを付け、耳ひもをループ状にします。耳ひもが二重になるので耳への負担は大きくなりますが、これならマスクの上下丈がすぼまることなく調節可能です。右図のように金属リングをかませばゴムの滑りもよくなります。


5. ワイヤーについて

市販のマスクにはへにょへにょなワイヤーが入っていますが、マスクをきつく縛ろうとするとすぐに負けてしまいます。指で簡単に曲がるぐらいなので当たり前ですね。そこでより硬いワイヤーの出番です。

愛用の一品、クラフトワイヤー。
φ2.0mmのアルミ針金に、ごく薄い被覆が覆っています。

このワイヤー、何とか指でも曲がる、ぐらいの硬さです。耳ひもを文字通り耳に掛けるぐらいのテンションならこれで十分です。手芸店で売ってます。本来の用途は写真にある通りで、さすがにマスクは想定してないようです(笑)。
一般人用のマスクには別途φ1.2mmぐらいのを売ってます。

これよりハイテンションなマスクをお望みの場合、ワイヤーの入手先はもはや手芸店ではなく、ホームセンターになります。そちらにはフェンス用などの太い被覆針金が売ってますのでよろしければどうぞ(笑)。フェンス用だとさすがに手曲げというわけにはいかず、ペンチで形状をこしらえながら現物合わせになります。一度形を決めたらそのままですね。

さて、ワイヤーは硬さも大事ですが、どこに入れるかも設計のカンどころです。

作る手間を考えると、一般的にはノーズワイヤーだけで十分でしょう。以前、プリーツ全段ワイヤー入りというすさまじいマスクも作りましたが、結論は以上です。なぜなら、ワイヤーが必要なのは凹曲面だけだからです。凸曲面になっている所には、マスクは勝手にフィットしてくれます。

ワイヤーは凹曲面に有効です。凸曲面にはゴムが有効です。

鼻の下に入れるセカンドワイヤー(右図)は拘束感を高める上で有用ですが、上述の寸法決めをよっぽどきっちりやらないと、とんでもないところに入ったりします(笑)。人目につかないところで着用感を楽しむのであれば、ここまで凝らなくても、鼻の下を通して後頭部でゴムひもを縛ったほうが簡単で確実です。

むしろセカンドワイヤーのメリットは、気密性の高いマスクでも呼気でポコポコ膨らむのを押さえられるという点にあります。いくら普通のマスクを装っても、人前で着けた時にポコポコ膨らむようでは、いかにも怪しいですからね。


6. パッドについて

ここまでは市販のマスクにフィーチャーされている機構ばかりでしたが、ここでは独自装備であるパッドについて書きます。

いくら寸法をきっちり測って作っても、やはりすき間は生じるものです。特に通気性の低い生地だったりするとなおさらです。呼吸する以上空気がどこかを通過する必要はあるわけですが、せっかくマスクを着けているのに、空気が通るのがマスクの「すき間」ではがっかりです。マスクのフィルタ効果を100%活かしたい。そんな場合に有用なのがパッドです。

パッドの例。
パッドのもうひとつの効果は、「いかにも密着している」感じを与えてくれるところです。ただ布が肌に触れているよりは、クッション性のあるパッドがビターッと周囲を覆っているほうが、遥かに着用感はいいです。その感触はもう、着用派なら病み付きになること請け合いです。マスクを自作して一番感動したのがこれだというぐらいのものです。

パッドは鉢巻きのように細長い布から作りますので、材料としてお手軽なのはふちどりテープ(バイアステープ)です。手芸店に各色並んでます。でも、周囲からのエア漏れを防ぐという点では、ゴム引き布などを切って作ったほうがいいです。写真のパッドは外側にはみ出していますが、うまく内側に取り付けることができれば、外出用にも問題ないかと思います。そう、パッドで難しいのはマスク本体にどうやって取り付けるかです。上下辺だけならまだ簡単ですが、四辺ともなるとその末端処理をどうするかが悩みどころです。これに関してはまだ、決定案は出せていません。


7. 当てガーゼについて

現在は市販の当てガーゼを重ねて使用しています。いくつか気になる点はあるものの、これに代わる物を自作するまで至らず、研究途上という状態です。

理想としてはこんなところです。

  • やわらかく肌に優しい。
  • 毛羽立たない。(ガーゼが毛羽立つと鼻がむずむずする)
  • 吸水性が良い。(保湿感を味わうため)
  • 厚さを任意に調節できる。
  • 値段が安くて加工が楽。(使い捨てにするので)
通気性については、マスク本体でチューニングするのであまり重要視してません。
むしろ肌触りと、息がこもった時のしっとり感が大事です。
果たしてどういう素材ならこれに見合うのか、身の回りにある生地を見渡しても、まったく思い当たりません。
どこかにヒントはないでしょうか…
2009.7.12

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