花粉マスクプロジェクト2011 (その4)
理想的な妥協

今回は、「花粉マスク プロトタイプ 2号」をモニターのお二人に試用していただいた結果を元にした改良型です。

「2号」の大きな問題点は、下記の2点でした。

  • ナイロン生地は息苦しい。
  • 耳紐+首ハーネス
    • 見た目に抵抗がある?
    • ゴムの掛け方を省略するとサイドに隙間が空く。
    • カラビナは目立つし取り外しが面倒。
花粉マスク プロトタイプ 2号
(前々回制作)

素材は何とかなるにしても、悩みの種は首ハーネスです。

ここでちょっと物理のお勉強。

普通のマスクのゴムはA-Bのラインです。AとBの間に隙間を作らないためには、この間隔を耳の上下丈に合わせる必要があります。

しかしこのサイトで作っているマスクのように、あご全体を包む形の場合、このラインではマスクの下半分にテンションが伝わらず、ぶらぶらになってしまいます

これを回避するにはA-Cのラインになります。すると今度はA-Cの間に収縮力がはたらき、側面に隙間が生じてしまいます。A, Cとも耳の前にある場合、ゴムが一番短くなるのはA≡Cの時ですからね。

写真1 マスクの物理学

前作まではこのような事情により、A-B間の耳紐と首ハーネスを併用したスタイルでした。実用性を高めるには、首ハーネスなしで理想のテンションを実現したいところです。

これはずっと悩みの種だったのですが、ブログをご覧の方から画期的なアイディアをいただきました。それがA-Dのラインです。これならD点が持ち上がろうとする力を耳で押さえられますので収縮は起こらず、側面に隙間が生じることもなさそうです。また、あご全体を包む力もはたらくでしょう。

素晴しいアイディアです。耳紐の下端を耳の穴より後ろへ持っていくことは思いつきませんでした。既存のマスクの形にとらわれすぎていたのですね。

問題点のもう一つ「素材」については、こんなのを見つけました。

写真2 綿サテン生地

綿サテン生地です。前作で使ったポリエステル100%生地は化学繊維のせいか、すごく蒸れました。そこで、行きつけの手芸店で「天然素材で表面がなるべく平らなものを」と相談したらこれが出てきました。サテンとはいっても写真2のように、シルクサテンのような光沢はほとんどありません。逆光に照らすとわずかに光沢があるかな、という程度です。薄くてしなやかで、ハンカチなどに使われるコットンより表面が滑らかな感じがします。

というわけでいきなり完成写真です。

写真3 花粉マスク プロトタイプ 4号

こんなに上下非対称のマスクは初めて見ました(笑)。
縫ってる最中も、どっちが上だか一瞬分らなくなるほど。

写真4 装着したところ。光沢感はこの写真が近いです。

上半分の幅は前作と同じで、下半分がワイドになってます。見た目の自然さと、あご全体を包む着用感とを両立したデザインですね。これなら全4作の花粉マスクの中でも、一番普通なルックスです。

着用感はサブタイトルの通り「理想的な妥協」というところです。耳紐だけなので上を向くと下辺に隙間が生じますが、マスクとしてのフィット性は確保できています。側面のカーブが絶妙で(自画自賛)、側面にもたるみはありません。耳たぶに常にマスクのふちが当たってるので最初は違和感があるかもしれませんが、じきに慣れます。通気性もじゅうぶん。厚手のガーゼマスクぐらいです。

でも、しばらく着けているとやっぱり蒸れます。使い捨てマスクのように。
天然素材なのに、なんでだろ?

結果、こういうことのようです。

写真5 「蒸れ」のメカニズム

マスクの中に空間があると、呼気がここに滞留します。顔の表面温度は呼気より冷たいので、呼気に含まれる水蒸気が顔に当たると結露します。これが「蒸れ」です。前々回の2号は表地がナイロンだったので通気性が低く、息を吸うと負圧でマスクが顔に貼り付きました。その際に結露を吸い取ってくれてたわけですね。前回の3号、そして今回の4号のように、通気性が高いマスクのほうが蒸れる現象はこれで説明がつきます。

なるほど、市販の使い捨てマスクの湿っぽさの原因がこれで分りました。使い捨てマスクの多くは圧迫感を無くすため、あるいは口紅が付かないようになどの理由で、口元に余裕を持たせているものが多いです。まさかこの配慮が、あの独特の不快感の原因だったとは…。同じ市販マスクでも、ガーゼマスクではこの湿っぽさを感じないのも、それが理由でしょう。

というわけで「マスクは顔に密着すべし」という貴重な教訓を得ました。

原因が判れば問題は8割がた解決したようなものです。さっそく改良します。

写真6 改良型 (花粉マスク プロトタイプ4号 Ver.2)

寸法を見直し、フィット性を高めました。最初に作ったモデルは鼻〜あごの突端までの寸法が現物(私の顔)より微妙に小さく、マスクが少し浮き上がってました。この寸法を1cm拡大し、密着するようにしました。

あわせて、こんな小改良も施しました。あごの下というか、あごの裏側を触ると分るように、ここにはちょっとした凹みがあります。この部分に合わせた凹曲線を採り入れることで、多少なりともマスクの前後動を抑えるようにしました。

これらの改良の結果、「蒸れ」はほぼ解消されました。これでようやく、モニターにお届けする第2弾が出来上がったと思います。

写真7 あご下のラインにご注目。

ちなみにこのVer.2、写真では分りにくいですが、表地には生成りのナイロンを使ってみました。試作品=自分用なので息苦しいほうがいいですし(笑)、白くて大きなマスクは威圧感を感じる人もいるかもしれないので、ナチュラルな色だとどれだけ印象が違うのかというリサーチも兼ねてみました。結果は良好。この個体、通勤用マスクにします(^^)。

それにしても立体マスクの設計って、ほんと微妙ですね。ちょっとした形の違いで着用感が大きく変わります。この「花粉マスク」シリーズではいくつか創意工夫をしましたが、いずれも「言われてみれば当たり前」なことばかりだと思います。もしマスクメーカーの方がここをご覧になったら「んなことはわかっとるわい」と思うんじゃないでしょうか。

こういう工夫って本来1人で悩むものではなく、いろんな人が知恵を出し合って進化するべきなんでしょうね。それを私1人で、狭い発想の中で「ああでもない、こうでもない」って試行錯誤しているから、なかなか進化しない(笑)。

愚痴っぽくなってしまいますが、こういう「研究」をしてるのって、本当に私1人なんでしょうか。少なくとも日本語を母国語とする人の中では、インターネット上でやってる人を見たことがないんですよ。できたら他の「研究者」の方と、アカデミックな(?)交流をしたいと切に願っております。花粉用に限らず、「マスクの自由研究」を標榜する私としては、今後の課題はそれだと思います。


2011.6.5追記

モニターのお二人からレポートをいただきました。感謝感謝です。
今回は掲示板に書いてくださった内容をそのまま掲載します(_o_)

pepeさん

2011.5.10
日曜日のお昼に花粉マスク着きました。
昨日、一昨日と2日間着けた感想です。
気温も27度以上で暑かったです。
花粉と黄砂の予防はタイプ1で実証済みです。

ノーズワイヤーは、これぐらいの硬さで良いです。
顔も痛くなく顔全体にフィットします。
前のタイプ1の場合は口元の横のとこが少し隙間が開いていたのですが、タイプ2は隙間なく顔にぴったりフィットしています。
凄く気持ち良いです。

綿サテンも良いですね。
ポンチニットと同じく見た目もおかしくない白い布です。
息苦しいこともないです。

マスクはタイプ1 (紺注 : プロトタイプ2号) は横から見るとフックが3つあったので耳ゴムも3本見えてました。
タイプ2 (紺注 : 今回のもの) は喉元の布が耳の下まで伸びてるので耳ゴムは1本しか見えません。

このデザインは画期的だと思います。
なかなかすっきりカッコいいデザインです。

はじめは目立つかなと思ったのですが、誰もじろじろみないです。
それだけマスクらしいマスクということだと思います。

あとは当てガーゼと耳ゴムの調整が大事ですね。
まだ二日しか使ってないのでまたレポートしたいと思います。

紺注 : ワイヤーは前回のご指摘を元に、柔らかいものに代えました。
左が前回、右が今回のです。

2011.5.11
昨日からの雨で非常に蒸し暑いです。
地面のへばりついていた花粉や黄砂はこの大雨で洗い流されてやっと花粉シーズンもおさらば出来そうです。

今日ぐらい蒸し暑いとマスクしてる人もだいぶ減ってます。
花粉マスクタイプ2もしてると汗が噴き出ます(滝汗)
使い捨てのプリーツマスクと違って本格的なマスクなので温かいですね。
これからのシーズンには辛くなってきそうです。
それに汗で冬より汚れるのが早いでしょう。
洗濯の仕方も考えます。

花粉マスクタイプ1とタイプ2並べて写真撮ったら1枚目は上下逆に撮ってしまいました。
それだけ斬新なデザインだということでしょう。
これだけ蒸し暑くてもマスクしてる人もいますけど夏風邪かもわかりませんね。
私も夏風邪のせいにしときます。

明日も雨みたいですね。
夏用のマスクがほしいです。

omuさん

2011.5.12
花粉マスク プロトタイプ 2号が届いてから当地では雨が続き、せっかくのマスクの効果も最大限に生かすことなく
1発目のレポートです。
まず届いた時の印象から、かなりスタイリッシュに決まっているなと感じました。
昔のアニメのキャシャーンみたい(^^)
で、最初は手触り。うん気持ちいい(^^) インナーマスクも装着し耳ゴム無しでとりあえず顔に当ててみる。
1号と比べかなり頬から喉にかけて大きくなっていると感じます。
耳ゴムは紺さんから頂いたゴムを着けてみましたが、1号の時と同様に私にはちょっと径が太いような。
紺さんには申し訳有りませんが1号と同様にやわらかマスクゴムに変更。
耳元のフィット感ばっちりです。
が、しかし喉のラインに若干の隙間が・・・。
喉のラインは1号の時がぴったりフィットしていました。
顔のカタチは人それそれなので難しいところですが。
鼻のラインのワイヤーもちょうど良いと思います。
頬の隙間もなくなりばっちりです。
最近は気温も上がり2号だとちょっと暑いですね。
インナーマスクの大きさもありますので寒い時は2号、多少暑い時は1号と使い分けても良さそうです。
息苦しさも気になる程ではないと思います。
進化した2号も良いが、1号のコンパクトさも捨て難い。
私は1号も2号もモニターになれてとても嬉しく思いました(^^)

2011.5.12
今日、2発目レポート。
インナーマスクの比較をしてみました。(右の写真)
やはりプロトタイプ 2号の方が大きくなってますね。
ついでに耳ゴムの写真も撮りました(以前も載せたんですがまた・・・。下の写真)
最近は雨のおかげで花粉も黄砂も少ないですが、鼻水が止まらなくなる事がありました。
それは、仕事で衣料の撮影をする時です。100着以上の衣類と格闘しながら撮影してると、多分、繊維が空中を舞っているのかクシャミ、鼻水が止まりません。
ということは、このマスク衣類の工場や布団工場、また目に見えないホコリと戦う人達に必ず需要があるような気が。
さて、また話は変わりますが今日の昼ご飯はラーメンを食べました。
その後マスクを着け、分かってはいたんですが匂いが・・・。(^^;)
でまた考えました。
インナーマスクで消臭効果があるものは無いか?
洗濯する時に良い香りがする柔軟剤と使うとか、インナーマスク自体に消臭効果がある素材を使ってみる等。
最近は肌着を買っても汗の匂いが付かない生地がありますよね。
私もユニクロのサラファインもってますが、肌触りもサラサラして気持ちいいし(^^)
同様の生地があれば花粉や口臭に効果があるかどうかは不明ですが、
夏に向けてのサラサラインナーマスクどうでしょう?
プロトタイプ 2号レポートからちょっと脱線しました(^^;)

お二方、レポートありがとうございました。
デザインはおおむね好評なようですね(^^)
側面のたるみは解消されたようで安心しました。

ゴム紐はご指摘ごもっとも、すぐに改善します。
あとは喉のすき間ですね…。
着脱のしやすさとの兼ね合いがあるので難しいですが、さらに改良を続けます。

夏用のマスクや消臭効果のあるインナーなど、ニーズはたくさんありますね。
実現に向けてがんばります(^^ゞ


おまけ

完成がだいぶ近づいてきたので、バリエーションを作ってみました。

写真8

夏向きの色にしてみました。

写真9

細かい格子模様が入った生地です。
さわやかな感じですね。

でも…
見た目とは裏腹に、通気性はほぼゼロです(笑)
これ、ウィンドブレーカーのようなナイロンなんです。

写真10

さらに裏地はツルツルのサテン張り。芯には綿ジャージ×2枚。
手触りはふっかふかで、スキーウェアのようです。

というわけで、外見からはわかりませんが、実は極悪マゾ仕様なのでした(^^;)
朝っぱらからこれを着けて通勤するのは、一種の屋外プレイです。

2011.5.2
1011.6.5

Prev  Next
HOME > 自作マスクの部屋 > 花粉マスクプロジェクト2011 (その4)
inserted by FC2 system